都心部に店をつくるということ

郊外とは違う「人の流れ」と付き合う商売
都市のまんなかに店を構えるとき、最初に押さえておきたいのは「郊外とは前提がまったく違う」という点です。
郊外が「暮らしている人の生活圏の中に入り込む商売」だとすれば、都市型は「駅やオフィス街に集まる、人の流れそのものを相手にする商売」です。
都市型店舗の商圏は、おおよそ半径500m〜1kmと言われています。徒歩5〜10分で来られる範囲の中で、どれだけ多くの人に気づいてもらい、どれだけ「ここに入ってみよう」と思ってもらえるかが勝負になる世界です。
同じ1kmでも、郊外の1kmと、都心の1kmは意味が違います。
都市では、その短い距離の中に、駅・オフィス・商業施設・飲食店・コンビニがぎっしり詰まっています。
その密度の中で、自分の店の「ポジション」をどう取るかを考えるのが、都市型立地の出発点です。

都市型店舗は「どんなシーンで使われるか」から考える
郊外の店は「誰に来てもらうか」から考えることが多いですが、都市型の店は「どんな場面で使ってもらうか」から逆算した方がうまくいきやすいです。
例えば、同じカフェでも、都市の中にはこんな使われ方があります。
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出勤前に、コーヒーだけさっと買う
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昼休みに、45分だけランチを済ませる
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打ち合わせ前後に、30分だけ時間をつぶす
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仕事終わりに、軽く一杯飲んでから帰る
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休日に、買い物ついでに立ち寄る
この「シーン」が変われば、求められるものも変わります。
・滞在時間・客単価・席のレイアウト・回転率・メニュー構成
都市型店舗では、このあたりを「誰向けか」だけでなく「どんな時間帯に、どんな使い方をされる店なのか」まで含めて設計しておく必要があります。

「目につくか」「入りやすいか」が勝負を分ける
都市の駅前や繁華街では、歩いている人の数だけでなく、「情報の量」も桁違いです。
ビルの看板、チェーン店のロゴ、デジタルサイネージ、ビラ、ポスター。その中で、通行人の視界に入る時間は一瞬しかありません。
だからこそ、都市型店舗では「目につくか」「入りやすいか」が直接売上を左右します。
具体的には、次のようなポイントが効いてきます。
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どの方向から歩いてきたときに、いちばん先に看板が目に入るか
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階段・エスカレーター・横断歩道など、人の流れの“節”から見える位置にあるか
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外から見て、店内の雰囲気が伝わるか
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ドアの位置や開け方が、「入りづらさ」を生んでいないか
「立地が悪い」のではなく「人の視線の流れに合わせて設計されていない」だけというケースも多くあるのです。
都市型の店づくりは、内装だけでなく「まちの中でどう見えるか」まで含めてデザインすることが欠かせません。

都市型では「WEB上の立地」も考える
都市の店は、実際の場所だけでなく、「情報空間のどこに立っているか」も無視できなくなってきています。
駅名で検索したときに自分の店が上位に出るか、地図アプリで探したときに見つけやすいか、SNSのタイムラインにどれくらい露出できているか。こうした要素も、今は立地の一部として考えた方がいい要素です。
たとえば都市のカフェを探すとき、多くの人はまず「駅名+カフェ」で検索したり、マップ上で近くの店を一覧で見て訪れる人が多くいます。
その画面の中で目に入らなければ、そもそも店の前まで来てもらうことすらできません。
逆に言えば、検索結果や地図、SNS上で先にイメージを持ってもらえれば、「この店に行こう」と決めてから駅を出てきてくれるお客さんも多くいます。
ここでも大事なのは、「誰に来てほしいか」だけでなく、「どんなシーンで選ばれたいか」を決めておくことです。
・仕事前にコーヒーを買いたい人に届いてほしいのか
・ランチの候補として比較されたいのか
・打ち合わせ前後の「一息つける場所」として記憶されたいのか

現実の通りの中での立ち位置と同じように、検索結果や地図アプリ、SNS上での見え方も含めて「街の中でどこに立つ店なのか」を伝えていく必要があります。
都市型店舗では、リアルの立地とWEB上の立地がセットになって、はじめてお客さんの足を動かすようになってきています。
都市型店舗の強さは「出会いの多さ」と「選ばれ続ける理由」
都市型のいちばんの強みは、新しいお客さんとの出会いの多さです。
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たまたま駅を乗り換えた人
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たまたまそのビルに用事があった人
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出張や旅行で、その街に来ている人
こうした「今日ここを通ったから」という理由だけで、ふらっと入ってきてくれる可能性があります。
一方で、選択肢が多いのも事実です。すぐ近くに似たような店がいくつも並んでいることも珍しくありません。
だからこそ、都市型店舗では
・一瞬でわかるコンセプト
・迷わず選べるメニュー構成
・短い時間でも印象に残る体験
このあたりが、そのまま「またあの店にしよう」という選択につながっていきやすいです。
都市の店は、「出会いが多い」だけでは足りません。その中から「選ばれ続ける理由」をつくっていくことが、長く続く店と、すぐ入れ替わってしまう店を分けるポイントになります。

都市型の店舗がうまくいく条件
まとめると、都市型立地が向いている店には、次のような共通点があります。
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人の流れの“幹”になっている動線上にある
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コンセプトや価格帯が、ひと目で伝わる
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短い滞在時間でも満足しやすいメニューとサービスになっている
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席数や回転率と、家賃・人件費のバランスが取れている
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近隣のオフィス・学校・商業施設など、周辺との相性が良い
都市だからこそできることがあり、都市だからこそ難しいこともあります。
「人が多い場所=出せば売れる場所」ではありません。その街の動き方や、時間帯ごとの顔つきを読みながら、自分の店がどこに立つべきかを決める必要があるのです。

立地デザイナーに見てもらうと、何が変わるか
ここからは、実際に私たちが都市型の立地診断レポートや現地調査で見ているポイントを、ひとつの例を通して紹介していきます。
今はインターネットで人口統計などのデータを簡単に手に入れることができます。さらに、そのデータをAIに読み込ませて質問すれば、かなりそれらしい答えも返ってきます。それだけでも、多くの場合は十分役に立つ情報になります。
それでもなお「プロに見てもらった方がいい場面」があるのはなぜでしょうか。一つは、「数字やAIの答えをどう解釈して、実際の店づくりに落とし込むか」という部分が、意外と難しいからです。
たとえば、料理に自信のあるオーナーさんが都心部にある自分の店の立地についてデータを調べたとします。その結果「40代の女性会社員を多く集客できそうなエリアだ」ということが分かった、としましょう。
このとき、多くの方はまず「40代の女性が好きそうなメニュー」を一生懸命考え始めるのではないでしょうか。もちろん、それ自体はとても大切なことです。
ただ、そこで思考が止まってしまうのは、とてももったいないのです。
私たち立地デザイナーが入る場合、発想の順番が少し違います。
まず最初に見るのは、メニューではなく「その40代女性が、本当に入りやすいお店になっているかどうか」です。
・中堅の役職についている可能性が高い女性が部下と出会わずにゆっくりとすることができるのか
・道路から見て、看板はきちんと目に入る位置と大きさになっているか
・お店の入り口の雰囲気は、40代の女性が「ここなら入ってみようかな」と思えるものか
こうした、「なんとなく入りづらい」「ちょっと不安だな」と感じてしまうポイントを、一つひとつ拾い上げていくところから始めます。
さらに、店内についても細かく見ていきます。
・看板のサイズや色合い、内装のトーンは合っているか
・テーブルの高さや椅子の座り心地は、40代の女性にとって負担にならないか
・メニュー表は、字の大きさやレイアウトも含めて読みやすいか
・40代の女性会社員に来てもらうには、SNS広告が合うのか、地域のチラシやポスティングの方が向いているのか

こうしたお客さまとのあらゆる接点を、すべて『デザイン』として捉え、ひとまとめにして提案します。そのうえで、オーナーさんと一緒に「どこから取り入れていくか」を決めていくことになります。
私たちは『立地』を“場所だけ”ではなく、お客さまがその場所と出会ってから店内で過ごすまでの一連の体験として捉えているからです。
同じデータを見ていても、誰もが同じ結論にたどり着くわけではありません。
一見、同じ数字や同じ風景を見ているようでいても、私たちには「解釈のしかた」を変えるためのノウハウがあります。見ているポイント自体もかなり違います。
店の前を歩く人の「歩く速さ」から、そのエリアに多いお客さんのタイプを推測するといったこともあります。
他にも、場所はまったく別でも「環境の条件」がよく似ているエリアで成功している事例を、多く知っているのも強みです。たとえば、東京都内のオフィス街の立地を検討しているときに、大阪で同じような環境条件でうまくいっている店の事例を引っ張ってくる、といったようなことです。
都市部の店舗は一度の立地ミスのコストが大きいぶん、数字やAIの答えだけで判断するのはリスクも大きいものです。「現場の温度」と「お客さんの心の動き」まで含めて立地を読み解きたい方向けに、私たちは都市型の立地診断というサービスをおこなっています。
都市型立地診断でできること
都市型の立地診断では次のようなことが明らかになります。
・候補地ごとに「人の流れ」「視線の流れ」「周辺環境」を整理
・今の場所で戦うべきか、別のエリアを検討すべきかの目安
・ターゲットとなる層が、本当に入りやすい店になっているかをチェック
・家賃、人件費、席数、回転率のバランスを「都市型」の前提で考え直す数字のデータ
初回の立地診断の相談は無料で受けています。
詳しいデータ分析レポートや、店舗デザインの具体的な設計・相談は、内容に応じて個別に見積もるかたちになります。
費用の相場はコチラをご確認ください。

私たちができること
私たちは、店舗デザインを主たる業務とするところから始まりました。
そこから店舗デザインだけでは店舗を経営するオーナー様の思いを達成できないことに気が付き、より大きな経営の視点から店舗デザインに関わることを決意しました。
私たちは、店舗を経営するオーナー様と、お店が何十年も続き、複数の店舗も持つようになり、代替わりしても関わり続ける、パートナー関係を築くことを旨としています。
そのため、店舗の立地を分析し、店舗の最適な物件情報、店舗内装デザイン、メニュー表作成、SNS運用・広告などをお手伝いします。 物件取得から商圏分析、店舗コンセプト、収支シミュレーションまでを一気通貫で考え、「その店にとっての運命の場所」を一緒に探すことを仕事にしています。
お気軽にお問い合わせください。


