ベッドタウンの小さなロードサイドカフェはなぜ成立するのか

立地分析:カフェ「イイジマ コーヒー」
(千葉県千葉市花見川区:八千代台駅から1,184m)

京成本線・八千代台駅から徒歩約19分。千葉市花見川区柏井町、県道72号沿いに建つ一軒家カフェ「イイジマ コーヒー(iijima coffee)」は、客単価1,000〜1,999円のコーヒーとケーキを中心にした小さな郊外カフェです。

席数は21席。専用駐車場は8台。カフェ利用は小学生以上・1組3名まで。1時間制・小声での会話・撮影ルールなど、「静かな一人時間」を守るための案内をあえて前面に出している、まるで大人の隠れ家を提供してくれるカフェです。

同じ3km圏には655の飲食店、そのうち48のカフェがある中で、食べログ評価3.51・習志野・八千代エリアのカフェランキング2位という高いポジションを取っています。

先に結論を整理すると次のようになります。

  • 3kmで人口約15.5万人・平均年齢約48歳・持ち家比率6割超という「成熟ベッドタウン」が商圏

  • 県道沿い・駐車場8台・21席という、車前提の生活動線に乗った小さめロードサイドカフェ

  • カフェジャンルでエリア上位。ケーキとコーヒーに振り切った「静かな一人時間」の店として、目的来店を集めている

  • 一方で「1時間制」「小学生以上・1組3名まで」「撮影制限」など、あえて間口を狭める設計のため、売上の上限は物理的に限られやすい

このページでは、

  • 人口・年齢・世帯・昼夜人口

  • 価格帯・ジャンル・ランキング

  • 席数・駐車場・業態・特殊要因(利用ルールやオンラインストア)

といった条件から、イイジマ コーヒーの立地ポテンシャルを整理し、ほかの地域で開業を考える人・既存店のオーナーにとってのヒントを抽出していきます。

問い

ベッドタウン郊外のロードサイドで、

  • 21席

  • 駐車場8台

  • 客単価1,000〜1,999円

  • 「静かな一人時間」を前提としたルール(1時間制・小学生以上・1組3名まで)

という条件のカフェは、どこまで成立するのでしょうか?

3km圏約15.5万人・平均年齢約48歳という郊外ベッドタウンの中で、「量」よりも「質」や「静けさ」を優先したコンセプトは、どれくらいの売上と利益を期待できる設計なのかを見ていきます。

1. 店舗基本情報

  • 店舗名:イイジマ コーヒー(iijima coffee)
  • 住所:千葉県千葉市花見川区柏井町1617-7

  • 最寄り駅:京成本線 八千代台駅(東口)

  • 駅からの距離:約1,184m(徒歩約19分)

  • 立地タイプ:県道72号沿いのロードサイド、一軒家カフェ

  • フロア:1階(平屋)

  • ジャンル:カフェ

  • 席数:21席(カウンターとテーブルの混在)

4.0

Google評価

3.51

食べログ評価

2/48

食べログ順位
(同ジャンル)

8/655

食べログ順位
(駅3km)

  • 平均予算目安:

    • 昼:1,000〜1,999円(ケーキ+ドリンクのセットで1,200円前後が中心)

  • 駐車場:約8台(店舗前)

  • 営業時間(目安):

    • 月・火・木・金 12:00〜16:30

    • 土・日・祝   11:00〜17:30

    • 定休日:水曜

  • 開店日:2014年4月2日

  • 食べログ評価:3.51(口コミ117件)

  • Googleマップ評価:4.0前後(口コミ約40件)

  • 3km圏 飲食店総数:655店

  • 類似ジャンル(カフェ等):48店

  • 3km圏 総合ランキング:8位

  • 3km圏 カフェジャンルランキング:2位

(2025年11月15日のデータ)

2. 商圏データと考察

店舗を中心とした立地に関するデータを(3km圏/1km圏)で比較します。

2-1. 人口・年齢・昼間人口

項目 3km圏 1km圏
人口総数 155,644人 12,813人
昼間人口 94,846人 7,775人
夜間人口 155,644人 12,813人
昼間人口比率 60.94% 60.68%
平均年齢 47.9歳 50.9歳
【考察】
  • 昼間人口比率が60%台ということは、昼間人口<夜間人口の「典型的なベッドタウン」構造になっています。
  • 平均年齢は県平均よりやや高めで、30〜50代の働き盛りとシニア層が厚い成熟住宅地です。
  • 1km圏の人口は約1.3万人とそこまで多くないが、車3km圏で15万人超という裾野があり、実質的な商圏は「車で5〜10分」の郊外型の広い範囲になっています。

2-2. 世帯構成・住宅形態・事業所

項目 3km圏 1km圏
一般世帯総数 69,438世帯 5,930世帯
世帯構成(3km圏) 世帯数 構成比
1人世帯 23,966世帯 34.51%
2人世帯 21,687世帯 31.23%
3人世帯 12,265世帯 17.66%
4人世帯 8,581世帯 12.36%
5人世帯 2,332世帯 3.36%
6人世帯 490世帯 0.71%
7人以上世帯 117世帯 0.17%
住宅状況 3km圏 1km圏
住宅総数 68,037戸 5,851戸
項目 3km圏 1km圏
事務所数 3,985件 273件
【考察】
  • 持ち家比率6割超は、定住性が高いエリアの典型。
    →「この街に長く住む人」が多く、常連化しやすい土台になっている。

  • 1人世帯が3割弱というバランスは、「単身者の街」というほどではないが、一人客ニーズが一定量存在する状態です。

  • 事業所比率はそれなりにあるが、いわゆるオフィス街ではなく、生活サービス・地場企業が中心です。

イイジマ コーヒーのようなカフェの場合、

  • 平日昼:

    • 近隣の主婦・パート層

    • 在宅ワーク層

  • 土日:

    • 近隣ファミリーの「ちょっとしたご褒美時間」

    • 車で来るカフェ好き

という来店パターンが自然に想定できる商圏と言えそうです。

2-3. 〖考察〗人口・年齢から見た「価格許容度」

  • 客単価1,000〜1,999円のカフェは、このクラスのベッドタウンでは「日常+少しだけ贅沢」ゾーンに入ります。
  • 持ち家比率が高く、平均年齢も高めのエリアなので、「毎日は行かないが、月に1〜数回は良いコーヒーとケーキを楽しみたい」という層が一定数いることが推測できます。
  • 3km圏15万人規模という裾野があるので、駐車場8台・21席のカフェを支えるには十分な人口規模になっています。

3. 店内情報と考察

3-1. 空間・席数・ルール

  • 席数:21席(カウンター席・テーブル席)

  • 全席禁煙(外に喫煙場所あり)

  • 雰囲気:

    • おしゃれで落ち着いた空間

    • カウンター席あり

    • 「一人で入りやすい」店として口コミなどで紹介されている

  • 利用ルール(公式・口コミベース)
    • カフェ利用は小学生以上

    • 1組3名まで

    • 店内利用は1時間目安

    • 小さな声での会話をお願い

    • 動画撮影禁止・席を立っての撮影NG など

【考察】

このルール群は、単なる「堅い店」ではなく、

  • 小さな空間

  • 駅から距離のある立地

  • 駐車場約8台というキャパ

という条件を踏まえて「誰に、どんな時間を提供したいか」を明確にしていると解釈できます。

  • 大人数のグループや小さな子ども連れをあえて制限し

  • 1時間×一人〜少人数の「静かな時間」に振り切る

ことで、

  • 客数の上限は自ら絞る

  • その代わり「この空間が好きな人」の満足度と再来店率を最大化する

という戦略を取っている店と言えます。これぞ見本ともいえる個人店のカフェの戦略です。

3-2. メニュー・価格帯・滞在時間

  • 予算感:1,000〜1,999円

    • ケーキ+ドリンクのセットが1,200円前後(期間限定タルトでプラス料金)

  • メニュー構成:

    • 自家焙煎コーヒー(豆違いで数種類)

    • 紅茶・チャイ・和紅茶・ほうじ茶などのティーメニュー

    • レモンパイ・季節のタルト・チーズケーキ・スコーンなどのケーキ・焼き菓子

  • 滞在時間の目安:1時間制(案内ベース)

【考察】
  • 1,200円前後のケーキセットは、郊外の生活者にとって「毎週ではないが、月に何度か通えるライン」です。

  • コーヒー豆や焼き菓子のテイクアウト、オンラインストアも含めると、来店と物販を組み合わせた売上構成。

  • 1時間制と静かな空間によって、
    「この店なら安心して一人で集中できる」「友人と静かに話せる」という心理的価値を提供。

単価を極端に上げるのではなく、

  • 適正な価格帯

  • 高い満足感

  • 通いやすい心理的ハードル

のバランスで勝負するスタイルと言えます。

3-3. アクセス・駐車場・導線

  • 立地:県道72号沿い、一軒家カフェ

  • 駐車場:店舗前に約8台分

  • 最寄り駅から徒歩約19分と距離があるため、実質的には「車での来店」が前提

  • 道路から見ると一見してすぐにカフェであると認知することは難しい
【考察】

駐車場8台・21席という組み合わせは、郊外カフェとしては次のようなバランスだと思われます。

  • 1台に1〜2名乗車だとすると、最大16名前後

  • 店内21席なので、駐車場がほぼ埋まった時点で店内も高稼働

  • 平均滞在1時間・営業時間4.5時間(12:00〜16:30と仮定)だと、理論上の最大席回転数は約4.5回転

この立地は「車前提・短時間滞在」のモデルと相性が良いです。

  • 駅徒歩1分・駐車場ゼロの都市型カフェとは、集客の考え方がまったく異なる戦略が必要

  • 「車で5〜10分圏で、静かなカフェに行きたい」というニーズを、どれだけ取り込めるかが勝負と言えそうです

4. 評価・ランキングと考察

4-1. 評価指標

  • 食べログ評価:3.51(口コミ117件)
  • 「習志野・八千代×カフェ」ランキング:2位(食べログ)
  • 一軒家・ロードサイド・郊外という条件を考えると、この評価と口コミ数はかなり高いです。
【考察】「郊外の目的地カフェ」というポジション
  • 駅前でもなく、商業施設内でもなく、県道沿いの一軒家という立地でこの評価を取れているのは、明らかに「わざわざ行く店」になっている証拠です。

  • 3km圏655店の飲食店と48のカフェの中で、総合8位・カフェ2位というのは、「郊外エリアの中核カフェ」のポジションです。

開業を検討する立場から見ると、

  • 3km圏で15万人クラスのベッドタウン

  • カフェが40〜50店程度存在する中で

  • 上位3〜5店に入るだけの「尖った価値」を作れれば

郊外ロードサイドでも十分に戦える、という一つの事例とみなせます。

4-2. 売上イメージ(あくまでシミュレーション)

ここからは、店舗分析シートの前提を使った「ざっくりシミュレーション」です。実際のお店の売上予測ではありません。しかし、新規店舗を計画している方やいま経営しているお店との比較をするときに参考になるのでシミュレーションをしています。

前提条件

  • 席数:21席

  • 営業時間:1日4.5時間稼働と仮定(営業中ほぼ常に着席可能な時間)

  • 滞在時間:1時間

  • 客単価:1,500円(ケーキ+ドリンクセット中心)

  • 営業日数:月25日

このとき、

  • 理論上100%稼働(常に満席)の月商は
    21席 × 4.5時間 × 25日 × 1,500円 ≒ 約354万円

  • 実務的には、

    • 50%稼働:月商約180万円

    • 60%稼働:月商約210万円

くらいが、現実的に頑張って目指せるゾーンでしょう。

もちろん、

  • 実際の売上は天候・曜日・季節・物販構成で大きく変動しますし、

  • このシミュレーションは「理論上どういう器か」を見るための目安です。

それでも「21席・客単価1,500円・ベッドタウン3km15万人という条件」なら、「月商150〜200万円ラインを安定して越えられるかどうか」が、郊外カフェとしての一つの分かれ目になってくる、というイメージは持っておいて損はありません。

5. 総合所感(分析の結論)

5-1. 立地タイプの整理

行政区分としては郊外・ベッドタウンですが、店舗利用の実態は次のような組み合わせになっています。

  • 商圏人口・住宅構造:ベッドタウン型

  • 交通手段:車前提のロードサイド型

  • 業態:カフェ(ティータイム中心・1時間制)

つまり、

  • 「都市型駅前カフェ」とも違い

  • 「郊外ショッピングセンター内のチェーンカフェ」とも違う

独特のポジションを取っている店舗です。

〖結論〗郊外ロードサイド・小さなカフェが成立する条件

イイジマ コーヒーのケースから見える条件を、ほかの地域で開業を考える人向けに整理すると、だいたいこんな形になります。

1)人口規模と年齢構造

  • 車で3km圏に15万人前後の人口がある

  • 平均年齢が高めで、持ち家比率が高い
    →安定した所得と、落ち着いた時間を好む層が厚い

2)立地タイプ

  • 県道・幹線道路沿い

  • 駅から徒歩圏だが、実質は車前提

  • 駐車場は6〜10台程度を確保

3)業態・コンセプト

  • 席数は20席前後の小さめ

  • 客単価は1,000〜2,000円ライン

  • 「静かな一人時間」「少人数での会話」など、誰のどんな時間を保証する店かが明確

4)ルール設計

  • 子ども・大人数グループをあえて制限し、コンセプトに合う客層に絞る勇気を持つ

  • 滞在時間の目安をはっきり伝えることで、限られた席数を無理なく回す

5)WEB・物販

  • 公式サイト・SNSで世界観とルールを丁寧に伝える

  • コーヒー豆や焼き菓子など、
    店外でも楽しめる商品を用意し、ファンの深さで売上を補う

この店は、

  • 「郊外ロードサイドの小さなカフェでも、3km圏15万人クラスの街であれば、 しっかりコンセプトを絞ることで成立させられる」

という一つの答えを示している事例と言えそうです。

地図:
ストリートビュー:

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