なぜ店舗は
"立地が9割"なのか

飲食店の繁栄には”立地”が大きなカギを握っている
高齢者の多い地域では、どれほどおいしいラーメンでも、こってりした味で、しかも急な階段を上った先にあるお店はなかなか流行りません。
男子大学生が多い理系大学の近くで、見栄えはするものの少量多品目のヴィーガン料理専門店を出しても、お客さんを集めるのはかなり難しいのは明らかです。
そのお店に合うお客さんと出会えない場所で「どんなにおいしい料理を作っても」「どんなにおしゃれなお店を用意しても」お客さんはなかなかやって来てくれません。
当然、そうしたお店が長く存続していくのは難しくなります。

立地とは何か?
そもそも「立地」とは何でしょうか?
話が一見飛ぶようですが、19世紀に進化論を提唱した生物学者ダーウィンの話が、この「立地」の本質をよく教えてくれます。
ダーウィンは30代の頃、ビーグル号で航海に出て、南米大陸やガラパゴス諸島などを訪れました。そこで多様な動植物を観察するなかで「生き物は環境に合わせて姿を変えていく」という考えを深めていきます。
特に有名なのが、ガラパゴス諸島にいるフィンチという鳥です。島ごとに違う形の嘴(くちばし)を持つフィンチがいることにダーウィンは注目しました。その島で手に入りやすいエサや環境の違いによって、生き残りやすい嘴の形も変わっていることに気が付いたのです。
例えば、花の蜜が豊富な島では、蜜を吸いやすい嘴の形をしたフィンチが生き残りやすくなります。硬い実が多い島では、硬い実を割りやすい丈夫で少し鋭い嘴のフィンチが生き残り、数を増やしていました。
「ダーウィンの進化論」というと、「強いものが生き残る」というイメージで語られることが多いかもしれません。しかし、ダーウィンが本当に伝えたかったのは「その場の環境に合っているものが生き残る」という自然選択(natural selection)の考え方です。
この「環境に適応したものが生き残る」というルールは、地球上でとても普遍的なものです。そして、お店の「立地の選定」も、実はこのルールと同じ流れの上にあります。
環境に合った種が生き残るのと同じように、その場所の環境(立地)に合ったお店が生き残り、繁盛していくのです。
だからこそ、お店を出すときには「この場所はどんな環境なのか?」をしっかり見極めることが大切です。そこを見誤ってしまうと、どんなに良い商品やサービスを用意しても、生き残るのが難しくなってしまうものです。


立地は何を見ればいいの?
「立地が大事なのは分かったけれど、では具体的に何を見ればいいの?」という疑問が出てくると思います。
ざっくり言えば、見るべきなのはこの二つです。
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その場所には、どんな人たちがいるのか
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その周りには、どんなお店がすでにあるのか
まずはここを押さえれば十分です。
都心なら「歩いて来られる範囲」、郊外なら「車で無理なく来られる範囲」をイメージして、そのエリアの人口を確認してみてください。
どの年齢層が多いのか、家族世帯が多いのか一人暮らしが多いのか、学生が多いのかといったことは、インターネット上の統計データを使えば無料でかなり詳しく調べられます。あわせて、出店を考えている場所の周辺を実際に歩いてみると、どんな人がどんな雰囲気で暮らしているのかも見えてきます。
近隣店舗を調べるのが大切
もう一つ大事なのが「その場所の周りにどんなお店があるか」をしっかり見ることです。意外とここを深く見ていない人が多いのですが、本当はとても重要なポイントです。
ここで、イメージしやすくするために、サバンナを舞台にしたたとえ話をしてみます。
アフリカのサバンナに、親元を離れたばかりの一頭の若いライオンがいるとします。この若いライオンは、自分の狩場を見つけるために歩き回り、やがて「獲物がそこそこ取りやすそうだな」という場所を見つけました。
ところが、その場所は体格も経験も自分の1.5倍はありそうな「サバンナの王者」のライオンが、すでにテリトリーとして押さえている場所でした。
このとき、若いライオンはどうすべきでしょうか?
王者のライオンと同じ獲物を狙って、真正面から勝負を挑むのが正解でしょうか。
そんなことをすれば、結果は火を見るより明らかです。テリトリーを荒らしに来た敵に、王者が手加減してくれることはありません。追い払われるか、ひどい場合には命を落としてしまいます。
ここで大事なのは、「勇気ある挑戦」と「無謀な挑戦」はまったく別物だ、ということです。

個人店なら大手チェーン店とは戦わない
では、この若いライオンはどうすれば生き延びられるでしょうか。
取れる道は一つです。
王者のライオンが狙わない獲物を取りにいくことです。
王者が押さえているど真ん中のエリアではなく、そこから少し離れたところで獲物を探す。あるいは、王者があまり好まない種類の獲物を狙う。
経験の少ない若いライオンにできるのは、こうした「王者と正面からぶつからない」戦い方です。
個人の飲食店は、この若いライオンの立場に近い存在です。
大手チェーンや食べログ上位の飲食店は、そのエリアで強いブランド力と資本を持つ「王者のライオン」のようなものだと考えてみてください。
飲食店の立地選びは、このサバイバルとよく似ています。
勝てない相手と、同じ土俵・同じ獲物で戦うのは、避けなければいけません。
勝てない戦いはしてはいけないのです。
大手チェーン店なら王道を貫く
一方、自分がすでに「王者のライオン」の立場、つまりその地域で強い認知と実績を持つ大手チェーンの立場にいるなら、考え方は変わってきます。
その場合に必要なのは、自分のテリトリーを盤石に守る戦略です。
同じお客さんを狙う競合が近くに出てきたときは、きちんと対抗策をとり、もっともお客さんを獲得しやすいエリアや価格帯をしっかり確保していく必要があります。
これまで積み重ねてきたブランドへの信頼を裏切らないようにしながら、「この店といえば、やはりこの味・このスタイルだよね」と言ってもらえるような王道の戦略を貫いていくことが大切になります。
場所や物件を”先”に決めてはいけない?
ここまで読むと「あれ、自分は立地をあまり検討せずに物件を契約してしまったけれど、大丈夫なんだろうか…」と不安になる方もいるかもしれません。
結論から言うと、焦る必要はありません。
たしかに、本来は「どんなお客さんを相手にするか」「どんなお店にするか」を考えたうえで場所を決める方が理想的です。ですが、先に場所や物件が決まっている場合でも、そこから立て直していくことは十分にできます。
むしろ、「今いる場所のことを本気で理解しよう」と決めた時点で、立地を深く読み解くスタートラインに立てているとも言えます。
やることはシンプルです。
今から、その場所や物件がどのような環境にあるのかを調べていけば大丈夫です。
・どんな人たちが暮らしているのか
・周りにはどんなお店があるのか
・人の動きはどうなっているのか
こうしたことを一つずつ見ていき、その結果に合わせて自分のお店の運営方針を整えていけばいいのです。

大切なのは「この立地(=環境)をできるだけ詳しく知ろうとすること」です。
場所を先に決めてしまったかどうかよりも、そのあとにどれだけ真剣に立地と向き合うかが、店の生き残りを左右していきます。
立地デザイナーに見てもらうと、何が変わるか
ここからは、実際に私たちが郊外型の立地診断レポートや現地調査で見ているポイントを、ひとつの例を通して紹介していきます。
今はインターネットで人口統計などのデータを簡単に手に入れることができます。さらに、そのデータをAIに読み込ませて質問すれば、かなりそれらしい答えも返ってきます。それだけでも、多くの場合は十分役に立つ情報になります。
それでもなお「プロに見てもらった方がいい場面」があるのはなぜでしょうか。一つは、「数字やAIの答えをどう解釈して、実際の店づくりに落とし込むか」という部分が、意外と難しいからです。
たとえば、料理に自信のあるオーナーさんが、郊外にある自分の店の立地についてデータを調べたとします。その結果、「50代の女性を多く集客できそうなエリアだ」ということが分かった、としましょう。
このとき、多くの方はまず「50代の女性が好きそうなメニュー」を一生懸命考え始めます。もちろん、それ自体はとても大切なことです。
ただ、そこで思考が止まってしまうと、もったいないのです。
私たち立地デザイナーが入る場合、発想の順番が少し違います。
まず最初に見るのは、メニューではなく「その50代女性が、本当に入りやすいお店になっているかどうか」です。
・駐車場は、運転にあまり自信がない方でも入りやすい動線になっているか
・道路から見て、看板はきちんと目に入る位置と大きさになっているか
・お店の入り口の雰囲気は、50代の女性が「ここなら入ってみようかな」と思えるものか
こうした、「なんとなく入りづらい」「ちょっと不安だな」と感じてしまうポイントを、一つひとつ拾い上げていくところから始めます。
さらに、店内についても細かく見ていきます。
・看板のサイズや色合い、内装のトーンは合っているか
・テーブルの高さや椅子の座り心地は、50代の女性にとって負担にならないか
・メニュー表は、字の大きさやレイアウトも含めて読みやすいか
・50代の女性に来てもらうには、SNS広告が合うのか、地域のチラシやポスティングの方が向いているのか

こうした「あらゆるお客さまとの接点」になる部分を、すべて「デザイン」として捉え、まとめて提案していきます。
そのうえで、オーナーさんと一緒に「どこから取り入れていくか」を決めていくことになります。
同じデータを見ていても、誰もが同じ結論にたどり着くわけではありません。
一見、同じ数字や同じ風景を見ているようでいても、私たちには「解釈のしかた」を変えるためのノウハウがあります。
そもそも、見ているポイント自体も違います。
店の前を歩く人の「歩く速さ」から、そのエリアに多いお客さんのタイプを推測することもあります。
また、場所はまったく別でも「環境の条件」がよく似ているエリアで成功している事例を、多く知っています。
たとえば、千葉県の郊外のベッドタウンで立地を検討しているときに、大阪の郊外で同じような環境条件でうまくいっている店の事例を引っ張ってくる、といったこともできます。
数字やAIの答えだけでは見えにくい、「現場の温度」と「お客さんの心の動き」まで含めて立地を読み解きたい方向けに、私たちは店舗の立地診断サービスをおこなっています。
あなたの店に近い立地タイプはどちら?
私たちができること
私たちは、店舗デザインを主たる業務とするところから始まりました。
そこから店舗デザインだけでは店舗を経営するオーナー様の思いを達成できないことに気が付き、より大きな経営の視点から店舗デザインに関わることを決意しました。
私たちは、店舗を経営するオーナー様と、お店が何十年も続き、複数の店舗も持つようになり、代替わりしても関わり続ける、パートナー関係を築くことを旨としています。
そのため、店舗の立地を分析し、店舗の最適な物件情報、店舗内装デザイン、メニュー表作成、SNS運用・広告などをお手伝いします。 物件取得から商圏分析、店舗コンセプト、収支シミュレーションまでを一気通貫で考え、「その店にとっての運命の場所」を一緒に探すことを仕事にしています。
お気軽にお問い合わせください。




